in the pool

お盆休みの期間は電車が空いている。

プールの後のおにぎり食べたい気持ちみたいな、疲労と浮遊が蔓延した会社で、隣の席のNさんが話しかけてきた。

ねぇ、脳は電気らしいですよ。それなら自力で鍛えれば、いつかはこのQRコードも読み取れるのかもしれないですよね。


鬱病とかが電気ショックで治ることがあるそうです。色も音も電磁波ですし、色の見え方は人によって違ってるらしいです。脳の電気をとても鍛えれば、読み込めるのかもしれないです。」とNさんに言うと、「でもQRコードは文字列だから、それを解析したサイトアドレスと、更にその中身を読み取らないといけないから、段階的になります。」とNさんは述べた。彼女は続けて、色素の薄い青い目の人は虹の色数の認識が少ないこと、彼女のお子さんが音痴なことを教えてくれて、彼女の最近の子育て面白エピソードを少し聞いた。電話が全然鳴らない。

Nさんはまあまあ変わってると思うけど、パワフルな二児の母で、元舞台女優で現脚本家で、声がよく通る、気持ちのいい人だ。好きだな。

今度ちょっとビール飲みに行きませんか、と言うと、では夏の間に行きましょう、と誘いに乗ってもらえて嬉しかった。


フロアには大きな冷房がいくつかあって、それぞれの場所だけキンキンに冷える。決して部屋に均等には涼しくならないようになっている。

わたしの所属する寒がり派は、ブランケットを会社に置いていて業務中それをかむっている。暑がり派の人は扇風機を付けたり、団扇で扇いだりしていて、パタパタしている。丁度いい気温の位置が生まれない構造と温度設定で、なんだか不毛。

ブランケットに包まった人間が3人並んだ机で、仕事が暇なので、皆うつらうつらしていた。じきに社内の点検が入るので、寝ていたら大変なことになる。

無理矢理に、NASAが太陽探査機を打ち上げた件について話した。最接近すると言うけど、1400度の耐熱じゃ全然足りないんじゃないの。コロナがビョンて来たらイチコロなんじゃないの。近づくと言ったってそんな近くじゃ無いんじゃないか。

私達は太陽探査機に少し不信感があります。


仕事はその後急に立て込んで、プールの後みたいな空気は蒸発してしまった。

帰り時間が夫と近かったので、駅のホームのベンチに座って待つことにした。また少しプールサイドみたいな気配。トンボが肩にとまる。


電車から吐き出された夫をキャッチして、太陽探査機の話をした。

彼は「えー、かつてない近さの映像来るね、地獄みたいなやつ来るんじゃないの!」と言って、確かに至近距離のコロナの映像は、とても怖そうだと思う。

1994年のペルセウス流星群を長野で見たとき、子供だったけど、呆気にとられて願い事をし忘れてしまった。 死ぬまでにもう一回くらい、派手な流星群が見たいかもしれない。それまでに誰か火星に行くのかな。

トランプ大統領の宇宙軍は超笑っちゃったけど、きっと軍事衛星の開発とかそういうことですよね。スターウォーズとかガンダムとか宇宙戦艦ヤマトみたいのを思い浮かべるから笑っちゃうだけで、実際は笑うに笑えない話なんだろうなぁ。NASAの偉い人とかも大変だな。


夫は最近は毎日23時ごろに、自販機まで散歩に行くんだけど、半分はタバコ吸いに行っているんだと思う。わたしは禁煙2ヶ月半くらいになって、だからって何も偉くない。

アメリカの白人至上主義の人のニュースをやっていて、クソ中のクソの内の1つ、と思いましたけど、まぁ今日はそれ以上の感想はなくて、やる気ないし、プールに沈んだみたいに、息が詰まっている。ですので夫に買ってもらったコーラを飲みます。