rolling

閉まりっぱなしのレースカーテンは、保健室のベッドのカーテンのようで、病院のようで落ち着く。レースカーテンを開くと、雨上がりの畑と濡れた自動販売機と、電線が見える。晴れると富士山が見えるけれど、私は別段、富士山が好きでも嫌いでもない。田舎の実家から見える比叡山はとても好きだったので、この心持ちの違いはよく判らない。

子供がいない人同士のLINEグループに誘われた。不妊治療をしても、子供ができない人もいる。流産してしまった人もいる。そういう人達の一部は、酔っぱらったりなんかすると私に、産めるんだから産みなよ、産みたくても産めない人がいるんだよ的な事を言ったりすることがある。私はこの時、病気で生きたくても生きれない人だっているのに、死んではいけないという意見のことをよく思い出す。似てないですか、少し。そう思いながら、LINEグループに加わる。

眠らないと太る。不眠は太ると思う。いつかは眠らなければいけない。それは早い方がいい。何故って明日は出勤だし。

IQ診断をしたら、至って普通だった。サイコパス診断をしたらサイコパスではなかった。メンヘラ診断をしても、メンヘラ度はかなり低かった。発達障害の特徴には当てはまらないように思った。ネットなんて詰まらないし、私はもっと詰まらないけど、アイデンティティの問題は、さすがにとっくに解決したんだと思う。私はヘミングウェイみたいになりたいんだと思う、と友達に言ったら、「きみは屈強でハードボイルドな男の人になりたいみたいなところは、わかるよ」と返ってきて、わかってもらえて嬉しかった。

将来のこととか、長期的なことが何も考えられない。今この瞬間だけを、いつも見つめてきた。世界を見逃したくないと思って、それが出来ないとわかって、世界の全部私の物でないなら死のうと思った。でも私は大人なので、だいたいの折り合いはついている。正しくありたいことの正しく無さについて、解は自殺だと思っているけど、エロスとタナトスは一瞬で充分だと考えると、それでは死んでしまうと思うけど、世界は進む。私は小走りで、一寸遅れながら、付いていくしかない。

夫が優しい。実際はその事だけで生きていて、なんだか私は、目の下の隈と頬の吹き出物を鏡で見た。昔は正義のヒーローになりたかったけど、鏡に映る自分は、ハードボイルドというか、ちゃんと戦っている人間に見えて、少しホッとする。夫は、吹き出物にニキビのクリームを塗るように言って、笑った。この時に時間が調整されて、私は世界から遅れを取らなくなる。でも実際の実際には、私が本当は屈強でハードボイルドでかっこいいから、夫は優しくしてくれるのだと思う。知らんけど。違うか。

彼を好きなことは、楽しい。友達がいることも、嬉しい。私は自分を肯定的に感じることができる。でも解は自死だと知っている。でも正解しなくたっていいのではないか。ダークヒーローだっていいではないか。

 

私は永遠に回る遊園地のコーヒーカップに乗りたい。吐くまで乗りたい。