散歩する障害者

更新した障害者手帳の受取りのために、市役所に出かけた。市役所は電車とバスで行く感じなので、まあまあ行きたくない。貴重な平日の休みを使ってさ。

まあでも仕方ない。手帳があれば映画が安いからね。


今住んでいる場所は田舎なので、市役所もゆったりしている。薄暗くてゆったりしていて、何かの施設の人がワゴンでお菓子を売って歩く声が響いている。林檎やよもぎのマドレーヌ、お土産や休憩にいかがですかぁ。

障害福祉課ではいつも同じおばさんが対応してくれる。この人はかなりクセがあって、市民には優しいのでわたしは構わないんだけど、多分一緒に働く人は大変な面がありそうに思う。知らんけど。

都民で区民だった時は、「こういうのが都であるので一緒に手続きしときます」という感じで訳がわからないまま医療費タダだったりなんだりしてて、手続きもサッサと終了していたので、引っ越した後に『やはり東京都は金があったんだな』と思ったりした。

今は県にそんなにお金がある感じじゃないし、いちいち申請書を書く感じなんだけど、細かい助成があって、優しくなくもないと思う。本当に必要な人しか申請しないようなことが色々準備されてて、適正かもしれない。さて、わたしはタクシー券も使わないしふれあいバスも乗らないんだけど、手帳の診断書代について助成が受けられるという。

おばさんが「ご存じ?」と聞くので存じ上げないと答えると、申請した方がいいと言って書類一式をくれた。領収書を持ち歩いているわけがないので、後日また来てくれと言われる。

ダメ元で郵送でもいいか尋ねると、その時は別の人が対応してくれていて答えを迷っていた風だったけど、どこからともなくまたおばさんが出てきて、「郵送でもいいよ」と言ってくれた。書き方の注意点を教えてもらって、一応ふれあいバスの券も申請することにした。

バスの申請書を記入していると、お菓子のワゴンが後ろを通る。市役所はワンフロアなのでよくわかるんだけど、お菓子は1つも売れていない様子だった。

「マドレーヌひとつください」と急に至近距離から大きな声がして、おばさんが立ち上がる。わたしに、書いててね、財布を取ってきますと言い渡し、パタパタと奥のデスクに消え、すぐに戻ってくる。

売り子の人は律儀に「林檎やよもぎのマドレーヌもあります」と言ったが、おばさんは「プレーンが好きなんです」と言って普通のマドレーヌを1つ買った。

わたしも買えばよかったな。色々書いてて忙しかったんだけど、林檎のマドレーヌなんてかなり美味しそうだ。売り子さんのアナウンスによると『毎日頑張って手作り』らしいし。書類を書き終わった時にはマドレーヌ隊は引き揚げてしまって、お土産は買えなかった。おばさんがプレーンを固持した時に、じゃあわたしがと言って、林檎とよもぎを買うのが正解だったな。多分。

 

このおばさん、引っ越し後の諸々の住所変更で初めて話した時はかなり疲れたんだけど、なんだかんだで数回会うと、とても好きになってしまった。絶対に正義の人だと思う。

他の担当の人もとても優しいんだけど、必ずおばさんが横からちゃちゃを入れに来て、こうしたら1回で済むとか、この助成はどうするか、とか言うのだった。口調が快活や明朗を通り越して、キツいのが特徴的。

でもおばさんの強目のお節介は大変有用で、自立支援と手帳の申請時期を合わせれば手続きが一度で済むとか、おトク情報が搭載されていて、優しい。

 

市役所に好きなおばさんがいるというのは、なんかちょっといい。おばさん、15時になったらコーヒー入れてマドレーヌ食べるんだろうな。だって障害福祉課、まあまあ暇そうだもん。他の人は、ちょっとマドレーヌが羨ましくなるかもしれない。

おばさんが注意してくれた点に気をつけながら、家で書類を書く。

あの人とバトルになる市民やその家族は確実にいると思うけど、とりあえずわたしは次回彼女が対応してくれたら嬉しい。というか楽しい。ま、郵送でいいらしいので、プチオレイマーな文を一行添えて、封筒で送らせていただきます。


帰りに無駄に郵便局を二軒見学して、道端に薙ぎ倒されていたポピーを拾って歩いた。

家に到着すると、砂嵐が起きていて、窓辺が畑の土まみれだった。マンションの階段や廊下も砂が積もっていて、玄関が汚い。

 

砂や土まみれの窓にポピーを飾る。牛乳を飲むと、すっかり何もする気がなくなったけど、仕方ないから窓の周辺を拭いて、肉じゃがを作ろうと思う。

新じゃがが安くて美味しいです。

少し眠いです。

 

散歩する侵略者、面白かったです