春風

 髪を切った。かなり短くなって後ろは刈り上げたので、首がすうすうする。襟足をたまに自分でカミソリで剃らないといけないのが少し面倒だけど、大胆な髪型は私を満足させている。今のところ。

 春の気候はあまり好きではなく、起き抜けの空気の冷たさから予測できない、昼頃の気温の上昇、凶暴に吹く風、何もかもが優しくないと思うし、うすら寒いのがとにかく嫌だ。毎年そんな感じで体調も崩していたけど、今年は特にそういうことにはなっていない。仕事を辞めたから元気なのであった。夜も早くに寝ている。

 朝起きて、コーヒーを飲み、着替えて掃除機をかけ、シャワーを浴び、コンビニで酎ハイを買い、フレンチトーストを作り、食べ、酎ハイを飲みながら韓国ドラマを観て、晩ご飯を作り、食べて、韓国ドラマを観る。いつまでもこの生活ができる訳ではないけれど、次の入院までは少なくともこのように春休みが過ごせることになった。きっとどんどん質素な内容になっていくと思うけど、それでもかなり自由な無職でありがたいことです。

 部屋の中にいても空気がひんやりする。今日は昼には25度になるという話だけれど、そんな気配がしない。カーテンを開いた外は白い空で、黒い電線が細くくっきりとしている。富士山は今日は見えなかった。脳の病気をして手術したりしてから、何だか友達というものが恋しくなってしまって、色々な友達に会いたくなっている。実際に物理的に居場所が近い人は連絡して会うことになった人もいる。死ぬかもしれないという状態はとても居心地が良かった。もう死なないようになってしまうと、何だかつまらなく感じる。子供じゃないんだから、と自分でも苦々しく思うけれど、死ぬかもしれない時は別に寂しくなかったのに、死なないことになると、急に誰かと話がしたくなった。生きていくなら、ひとりは嫌だ。何だかアルコールの量も増えたような気がする。依存的な人間です。本当はそうでもないけど、でも助けは必要としている、常に。おばさんになってもね。

 無職なのでとにかくお金が無い。生活費はある程度夫が賄ってくれているが、人間には雑費というものがあるではないですか。急に本も自由に買えない立場になったので、仕方なく図書館を活用している。この街に引っ越してきて初めて、市の図書館の利用者カードを作った。小さな市なので図書館の規模も小さかったけれど、漫画も小説も読みたいようなものが揃えてあって、あとは子供の絵本が明るい個別の部屋にかなりの数があって、それらが好印象だった。メインフロアのカビ臭くて暗い感じも落ち着く。図書館自体は電車に乗ってバスに乗らないと行けないのだけど、ネットから予約が出来て、近くの公民館で予約書籍を受け取ることが出來、公民館の返却ポストで返却できるので、それを覚えてしまうと急に図書館が便利になった。「おたんこナース」を二回に分けて全巻読みました。小説も借りたけれど、今の無気力な生活ではあまり読めなかった。公民館では、何か怪しい薬物でも入っているかのようなシワシワの紙袋で本を渡されるので、特別な感じがする。

 昨日クレイジージャーニーを漫然と観ていて、丸山ゴンザレスの回で、パリの地下生活とかスラムを取材していた。パリの家賃って25万円以上とかで、そんなに高いんだとびっくり。それで地下に生活空間があってかなり広くて映画館まであるのでびっくり。とにかく生活っていうのは色々あるんだと思った。私も暮らしていくのかしら。どんなにかして、笑ってやっていけるといいけど。