サンセット

 よく晴れた山の日です。家はしいんとしています。私の家は西陽が強く差すわけではないですが、それでも夕方近くなると一旦室内がとても明るくなります。夏はその後に強烈な夕焼けがあって本当に綺麗です。滲むコーラルピンクを刺すようなオレンジが、だんだんとシャンティガフみたいな色になっていって、濃くて暗い夜が来るのは、何だかタヒチにでもいるような気持ちです。(タヒチに行ったことはないです)

 「プアン/友達とよばせて」という映画を観に行きました。白血病になったウードという若い男性が最後に元カノ巡りをするというので、NYからボスという友達を呼び出して、車でタイ各地を巡るっつうロードムービーなのですが、王家衛が総指揮ってことだったので観て、王家衛味はすごいあって、監督も俳優も良かったと思うのですが、如何せん元カノに会いたい気持ちがわからず、ボスがボンボンすぎて共感できず、会いに行く女の子たちも然程幸せそうでもなく、とにかく何もじんと来なかったです。でもカセットテープの使い方とか、赤髪のNYでのアリスとタイでダンス教室をするすっぴんっぽいアリスのどっちも可愛い感じとか、ボスがめっちゃ足長いのとか、痩せてるウードが妙にイケてるのとかはちょっと良かったです。

 

 夫が在宅勤務なのですが、私が毎日通勤を暑がっているので、首から下げる送風機を買ってくれました。電動で、見かけはヘッドフォンみたいです。色は濃緑です。ちょっと音がするので、電車内とかでスイッチを入れるのは憚られるのですが、駅から家までの道でブインブイン言わせて活用しています。最近私は物をもらったり、買ってもらったりするのが上手かもしれません。子供の頃は全くそんなことがなく、ねだったりプレゼントを指定したりといったことが苦手だったようなので、単に大人になって周囲の人に恵まれているという話かもしれない。それか物欲しそうな顔の大人になっただけかもしれない。とにかく私は送風機を引っ掛けて歩き、頂き物のタオルで顔を拭いて、いつの間にかポケットに入っていた塩飴を舐めて、畑の脇道を駅まで歩いています。途中の道路が昨日舗装されて、黒々として妙に滑らかになって、のどぐろのようです。でものどぐろってどういうものか詳しくわからないけれど。

 

 広島の日の黙祷は寝過ごしてしまって、長崎の日は仕事中で忘れてしまった。戦争のことがずっと、知ってからずっと、怖くて怖くて嫌です。今も戦争は起きている。そしてそのことを考えるにつけ、早く確実に死にたい、少しでも生き残りたくないって思ってしまうのは、それはやっぱり怖いからなんだと思います。怖い目に遭いたくない。そして誰にも遭って欲しくないです。普通そうだと思う。