closed world

具合の悪い時、何故閉鎖病棟が安心するのか考えたけど、どこにも出て行けないということと同じくらい、何も入って来ないということが重要なんだろうと思った。

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夫が毎日疲れ気味のようで、ソファで眠ってしまう。布団に入っても、死んだように音も立てず眠る。私は隣の空間にごそごそと潜り込み、口に含んだ氷が歯にあたってガコガコ言う音について、心の中でごめんごめんと呟きながら、眠くなるのを待つ。翌朝はいつも、夫は早くに起きてすっきりとした顔をしている。生き返ったみたいだと思う。私の朝は夜と地続きなのに、彼はまるで毎朝黄泉がえりである。最近、難解な夢を見ているようで、たまに報告がある。

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私は死にたい。このことは仕方がないので、死にたい人として生きるのが良いと思う。生きることは義務だけど、私には義理を感じる人が沢山いるし、痛いのは嫌だし。

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沢尻エリカ様の麻薬の件について、なんの意外性も無いのに連日大きく報道することなのかどうか、という問題はさておき、エリカ様をバッシングする人もよくわからない。自分が麻薬に依存する可能性を、ゼロと見做せる心理が不思議だ。

思うのですが、あなたも私も彼も彼女も、多くの事は運が良かったか悪かったかで決まっている。私達が逮捕されてないのは、運が良かったからです。それだけだと思うよ。

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日本の最近の閉塞感は、私はもしかしたら皆、閉鎖病棟の安心と似たものを求めているんじゃないかと思った。だとしたら、ちょっと病んでいる。

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父は、この国の日常の強さは粘り腰があるから楽観視していると言う。私は個人的な問題として、日常に強さが無いので、父の意見は信用出来なかった。

父は鮮明な人生の瞬間の記憶として、母と幼い私や妹を連れてプールに行った時の、溢れる光のキラキラや私の手を掴んだ時の光景が、最高の幸せとして胸にあるらしい。そこからずーっとその気持ちが続いている、と彼は言った。私の母が聞いたらゾッとしそうな程感傷的だけど、私は理解したし、愛されて育った事を思い出した。父の日常は、強いと思う。

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夫がサッカーを観ている。私は知らない選手ばかりなので、出たら目に名前を付けた。最近改良されたというサッカー日本代表のユニフォームは、叫びたくなる程ダサくて、選手を気の毒に思った。私はダサいのは嫌いだ。真面目にやってくれ。

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フランスのフェミサイド抗議のニュースを見る。日常が大事で尊いことは知っている。でも、失われるものは、返ってこない場合もある。

私はダサいが生きる。嫌だけど頑張る。それなら知らない人のことでも、この世界で起きていることを、知りたいと思う。その孤独が、たまに悲しい。