活きる

食品には消費期限がある。野菜は腐るし、肉も腐る。卵も牛乳も何もかも。

冷蔵庫には、活きのいい死体がいろいろと詰め込まれている。

加工食品や乾物にしたって、きちんと保存しないと、虫が湧いたりする。

ま、何でも冷凍すればいいんだけど。

 

何か物を贈る時に「消え物の方が負担がなくていいね」とか言ってお菓子だとか買ったりするけれど、食べるって本当に消えるし、際限ない消費活動だと思う。人はわざわざ動物を育て植物を育て、屠殺したり収穫したり、発酵させたり干したりして、それぞれに産業があって、販売されたものを買って、最後に調理して食べる。食べない人間はあまりいないから、調理をするかはともかく、人間はみんな食べる。食べて寝て生きている。

 

 

冷蔵庫が好きだ。

冷蔵庫は優しい。冷蔵庫の中はいつも冷たく、開けると青白い。鶏肉を庫内の引き出しに入れると、これはこの家で食べる分のお肉なんだ、と思う。野菜室に入ったトマトは、調理の順番待ちをしているように見える。食べ物が食べ物としてわたしを待っている。

冷蔵庫はわたしの管理する、寒くて小さな世界だ。

 

 

肉じゃがを作った。食に関心がなくなって2、3週間、やる気のない管理人の所為で冷蔵庫ではいろんなものが死に絶えていたんだけど、しなしなのキュウリや古いヨーグルトを捨てて、何か料理しようと思い、しかし何も浮かばなかったので、肉じゃがにした。

それほど好きじゃなくて普段作らないんだけれど、リハビリ的にするなら確立されたメニューがやりやすい。

普段はいろいろ生姜で炒めたやつ、とか料理名がないものをテキトーにでっち上げて作っているけど、それはなかなかエネルギーがいることみたい。

結局肉じゃがの他にキュウリの塩麹炒めを作って、味噌汁はあんまり好きじゃないから作るのをやめた。

 

肉じゃがはぼーっとして煮崩れさせてしまったけど、夫は美味しいと言って食べていた。

美味しいご飯が作られることは、単純にとても嬉しい。